公開日 2025年7月30日
明治時代にも伝染病対策が議会(村会)で取り上げられていました
※令和3年11月掲載
令和2年の1~2月頃から、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の問題が大きくなりました。当初は、感染した患者の濃厚接触者等に対する「PCR検査」から始まり、次第に感染が拡大していく中、人と人との接触を抑えるために「公共施設の休止」や「小中学校の臨時休業」などが実施されました。また、市販のアルコール消毒液等が入手困難になったことに鑑み、本市では、令和2年4月下旬から6月中旬まで、除菌効果が期待できる「次亜塩素酸水」の無料配布が行われました。さらには、官民を問わず「テレワーク(在宅勤務)等の推進」や「押印に関する規制・制度・慣行の見直し」の意識が一気に浸透していきました。一方、国の緊急経済対策としては、「特別定額給付金」をはじめとする各種施策が行われました。なお、令和2年(2020年)は、東京でオリンピック・パラリンピックが開催される予定でしたが、コロナの世界的流行を受け、1年延期されました。
その後、「新しい生活様式」を取り入れる動きが進み、「ウィズ・コロナ」や「アフター・コロナ」などの言葉も生まれ、しだいに「暮らしや地域経済」を継続的に支援する必要性の認識が高まっていきました。
そして、令和3年に入ると、日本でも「ワクチン接種(集団・個別)」の体制整備が進み、本市では、高齢者施設に入所・入居している65歳以上の方への接種が4月から始まり、順次拡大され、令和3年11月1日現在で、2回接種済が514,200人となりました。また、7月から8月にはオリンピック・パラリンピックが開催されました。
現在(令和3年11月上旬)は、いわゆる「第5波」の収束を感じることができる状態ですが、これまでに、相模原市議会では、新型コロナウイルスに関係する質問・質疑が数多く取り上げられました。その詳細は広報紙(相模原市議会だより)などに譲るとして、ここでは、明治時代にも伝染病対策が議会(村会)で取り上げられていたということを、相模原市議会史(記述編Ⅰ)から抜粋して紹介します。
記述編Ⅰピックアップ(明治時代の議会でも伝染病対策)[XLSX:48.2KB]
相模原市における「第5波」(令和3年7月頃~9月頃)[PDF:621KB]
この中で、「予防委員」という語が頻出しますが、これは、明治30年制定の伝染病予防法に規定された「伝染病予防委員」のことと思われます。(当時の伝染病予防法の条文は、国立公文書館デジタルアーカイブなどで確認することができます)
明治30年3月30日 法律第36号 傳染病豫防法
第15条
傳染病流行シ若ハ流行ノ虞アルトキハ市町村ハ地方長官ノ指示ニ從ヒ
市制第61條 町村制第65條ニ依リ傳染病豫防委員ヲ置キ檢疫豫防ノ事ニ從ハシムヘシ
但シ市町村會ノ議決ニ依ルノ限ニ在ラス
豫防委員ニハ醫師ヲ加フヘシ 其ノ醫師ヨリ出ツル者ハ市町村長之ヲ選任ス
なお、予防委員が具体的にどのような活動や業務を行っていたかについては、記述編Ⅰからはわかりませんでしたが、別の文献(改正伝染病予防法要義 隔山和三郎 偉業館 1905)によると、「住民をして相當の助力を為さしめ併せて豫防上の知識を養成普及せし」め、また「市町村の代議機關と行政機關との聯絡疎通を保ち両者圓滿の運轉とによりて豫防の奏効を期せむとする」ために置かれていたようです。
また、伝染病の種類としては「コレラ」を中心とした記述になっていますが、症状としては次のようなものだったそうです。
宮川米次「法定傳染病とは何か」(通俗医学講座第4輯 東京朝日新聞発行所 昭和4年)
發病した際のおもな徴候は(中略)突然嘔吐し、下痢が来る、腹痛がある、その初めに吐出するもの、假として出る物は、食物の残渣か、通常下痢便であるが、間もなく米の湛ぎ汁の様な、白い輕く濁った一種特有な臭ひのする水を一時に驚く計り澤山吐いたり、下したりする。然かもその吐くのに普通食當りなどの場合の吐瀉とは異なって餘り苦しみもなく、容易にダアーと吐く、(以下略)。
さて病人はこの特有な吐瀉及び下痢が一、二回あると、見る見る内に衰弱して、全く無氣力になって終ふ、吾々は之れを虚脱と名付けて居る。熱は低く、屡々平温以下であるに、冷汗を出し、見るからに隠阻な顔をして、この世の人ではない様な容貌になる(以下略)。皮膚並に口は全然渇いて終ひ、皮膚は弾力を失うて摘まみ上げた皺が元に返らない様になって終ふ、尿は全然出ない、聲は涸れて来る、通常この様な特有の症状を現はすものは一、二日の内に死んで終ふか、或は假死の状態になって、半死半生の境を彷徨し、数時間、十数時間生きて居て死ぬのを常とする。(中略)
以上の外に「コレラ」の病症は色々で、發病後数時間で死ぬ、まるで雷にでも打たれた様に早く終はるもの、或は又高熱を出して一寸「チフス」かと思はれる様なものもあるが、又一方には僅かに数回の下痢位で治つて終ふものも却々に多い。
