記述編ピックアップ(その7) ~ 当選人の繰上補充 ~

公開日 2025年7月30日

当選人の繰上補充  ※令和5年9月掲載 

 2019年(平成31年)4月7日執行の相模原市議会議員選挙(中央区選挙区 定数17)において、開票の結果、17番目(当選最下位)の得票が3158票で、2人が同じ得票数で並びました。そのため、公職選挙法の規定により、くじ引きにより当選人が決まりました。

 それから4年後の、議員の任期満了が近づく2023(令和5年)年3月に、中央区選出の議員の死去により欠員が生じたことに伴い、4年前の選挙で当選人とならなかった候補者が、繰上補充により当選人になりました。

 公職選挙法では、選挙の当選人が死亡・辞職した場合に、次点の候補者を繰り上げで当選人とすることが規定されています。地方公共団体の議会の議員については、対象となる選挙の期日から3箇月以内に欠員が生じた場合に、次点候補者が繰り上げ当選となりますが、3箇月を経過した場合であっても、当選人と同数の票を獲得し、くじ引きにより当選人にならなかった者がいる場合は、その者が繰り上げ当選となります。

 くじ引きで当選人が決まり、さらに任期満了近くになって繰上補充が行われたという、珍しいケースのように思えますが、同じ時期に、他の自治体の議会においても類似の事例(2019年4月の選挙で得票同数のためくじ引きが行われ、4年後の2023年に、市議が県議選に出馬したことに伴い、くじ引きで当選人にならなかった者が繰上当選となった事例)があったことにも驚きます。

 相模原市議会における過去の事例を議会史で確認したところ、この事例と同じものは見当たりませんでしたが、繰上補充については事例がありましたので、記述編Ⅱから抜粋して紹介します。

 

  繰上補充が行われた事例[DOCX:20.7KB]

 

※補足

 議員に欠員が生じた際に、「同数の票を獲得したものの、当選人にならなかった」者を繰り上げで補充する制度自体は、かつての衆議院議員選挙法にもみられますが、現在の形に近いものになったのは、大正14年の改正のように思われます。

 なお、同数の票を獲得した者をこのように扱う理由について、文献(改正衆議院議員選挙法正解 小中公毅ほか 法令審議会 1925)によれば、「当選人たることを得なかったのは、単に抽籤の結果に基くのみで、之を得票数から見れば、当選人となった者と同数の得票あった者で、即ち当選人たるに十分なる選挙人の信任を得た者だと云うことが出来るから、(中略)抽籤に依り当選したる議員が欠員と為った場合のみに限らないで、議員中何れが欠員となった場合でも当選人と定むることは、不当でないと認めらるるに由る」とのことです。